おいでよ!トノフォン航空公園 第4回

2015.05.07 Thursday

一人の男が航空公園の運動場で殺されていた。仮にこの被害者をAと呼ぶ。検視の結果、死亡推定時刻は夜中の21時頃と見られる。
航空公園署の刑事、岸野はこの不可解な事件に頭を悩まされていた。


その日、Aは友人のBとCと航空公園内の野球場の前で21時に待ち合わせをしていたという。
Aは21時にBとCに「野球場ついたよ〜」とメールを出していた。Bは丁度その時間に野球場に着き、Cはその約5分後にやってきたという。しかし、待ち合わせ場所にAは居なかったと二人とも口を揃える。
 
Bの証言によると
「その日は、友人のAとCと夜中にジョギングをするために公園内で待ち合わせをした。自分は待ち合わせの21時に野球場前に着いたが、丁度その時、Aから「野球場についたよ〜」というメールがきた。辺りを見回したがAの姿が見えなかったため、電話を架けたがAは出なかった。その5分後にCがやってきた。
しばらくその場でAを待ったが、再度連絡しても繋がらなかったので、二人でジョギングをして帰った。
自分とCは航空公園には何度も来たことはあるが、Aは初めてだったので、Cが事前に地図を渡していたと聞いている」
という。Cの証言も大方同じである。
 
BとCの二人がその時間に野球場前にいたことは、夜中に公園内をウォーキングしていた主婦グループの証言で確認されている。その後二人でジョギングしていた姿も目撃されている。
 
Aは野球場に着いてメールを出した直後に殺されたと見られるが、不可解なのは死体は運動場で見つかったということである。
野球場から運動場までは、成人男性が普通に歩いても5分はかかる。仮にBが21時に野球場でAを殺害し、死体を担いで運動場まで運び、また野球場まで戻ってくるとなると往復で10分以上かかるだろう。Cがやってくる5分の間に野球場に戻るのは不可能である。
そもそも死体を担いで公園内の道を歩いていたら、他の夜間にジョギングやウォーキングを楽しむ人たちがその様子を目撃しているはずである。
 

「ではCが犯人だとすると……わからん」
と岸野刑事は頭を抱えた。どう考えても、BもCも21時頃に野球場でAを殺害し、運動場に運んでまた野球場に戻るのは不可能である。
煮詰まった岸野刑事は、Aの発見時の所持品を見直すことにした。
 
Aは発見時ジャージ姿で、所持品はポシェットとその中に入っている財布、携帯電話、そしてトノフォンフェスティバル 2015のフライヤーのみであった。
「トノフォンフェスティバルか……」
と岸野刑事はフライヤーを眺めながらつぶやいた。
「出演は明和電機、neco眠る、yumbo、森は生きている、麦ふみクーツェ楽団、そしてトクマルシューゴか。豪華だな」
岸野刑事の趣味は音楽鑑賞で、トノフォンフェスの出演者の名前はもちろん全て聞き覚えがあった。
「いや、豪華なだけでなくユニークな組み合わせだ。この先、この6組を一度に、しかも野外で見られる機会は二度と無いだろう」
 
岸野刑事はふとフライヤーの右下の部分に目を落した。そこには駅から会場の野外ステージへの地図が載っていた。CがAに渡した地図とはこのフライヤーのことだろうか。
岸野刑事はしばらくフライヤーの地図を眺めていたが、あることに気が付いた。そして、この事件の真相を解き明かしたのである。
 

犯人はCだった。
Cは、航空公園に行ったことの無いAに、待ち合わせ用の地図としてトノフォンフェスティバル 2015のフライヤーを渡していたのである。
実はこのフライヤー、印刷ミスで地図の運動場と野球場の場所が逆になっていたのだ。
航空公園に初めて来たAが、この地図を見て運動場にやってきて、夜の暗闇の中、広大なグラウンドを野球場と勘違いしてもおかしくはない。
 
Cは夜中の人気の無い運動場でAを待ち伏せし、野球場と思い込んで運動場にやってきたAを殺害、そしてその後そのまま野球場に向かったのである。
Cはアリバイ作りのため、Aに待ち合わせ場所に着いたらメールをするように言っておいたのであろう。Aがメールを送ると、背後から自分が送ったメールの着信音が鳴り、振り返るとCの姿が。そして……


フライヤーの印刷ミスが生んだ悲劇は、岸野刑事の名推理によって幕を閉じた。
しかし、安心して欲しい。このコラムの1回目と2回目に駅から会場までの行き方が書いてあるので、コラムを読んでくれているみんなは迷わず会場にたどり着けると思う。更に当日は、公園内に会場までの案内板が出ると思うので、野外ステージへの道のりで迷う事は無いだろう。


 犯行に使われた地図


 正しい地図


 
 

 
TONOFON FESTIVAL 2015
コメント
コメントする